こんばんは! 国際中医師・ピラティス講師の澤田みのりです。
頭痛やめまいが続くと日常生活に支障をきたし、気持ちも沈みがちになりますよね。
「どうにかしたいけど、薬に頼るのも気が進まない……。でも症状は一向に改善しない……。」
と、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、中医学の観点から不調の原因を探ってみると、改善へのヒントを得られるかもしれません。
中医学では五臓六腑の働きのバランスが崩れると、さまざまな不調が起こると考えられています。頭痛やめまいも、その不調のひとつです。
この記事では、頭痛やめまいが起こる原因とその対策を中医学の観点から説明していきます。
ご自身の身体の状態を振り返る際の参考にしていただけると幸いです。
もくじ
1. 頭痛やめまいはなぜ起こる?
1-1. 「頭」の概念
1-2. 「頭痛・めまい」の概念
2. 【タイプ別】頭痛やめまいのきっかけ
2-1. 風邪侵入
2-2. 肝陽上亢
2-3. 気血不足
2-4. 腎精不足
2-5. 痰湿
2-6. 瘀血
3. セルフケアとしてできること
3-1. 食養生
3-2. 生活養生
4. まとめ
<<頭痛やめまいはなぜ起こる?>>
頭痛やめまいが起こるきっかけを知るうえで、「中医学でとらえる『頭』とはなにか?」「頭痛・めまいとはなにか?」の理解が大切です。
この項ではそれぞれの概念について説明いたします。
<「頭」の概念>
中医学では、頭を「清陽の府」と呼びます。清陽の府とは、清らかな陽気が集まるところという意味。
五臓の働きのバランスが崩れて清らかな陽気を頭部に集められなかったり、頭部に集まった陽気がさまざまな要因で乱されたりすると、不調が表れると考えるのです。
逆に言えば、五臓の働きが正常かつ清陽が頭部に集まっていれば、頭は軽くスッキリします。
<「頭痛・めまい」の概念>
中医学には「不通則痛」という言葉があり、エネルギーのもとである「気」・栄養を運んでくれる「血(けつ)」・身体を潤す「水(すい)」が詰まって通じないと痛みが出ると考えます。
たとえば、血質が悪いために血流が阻まれたり、ストレスなどで代謝がうまくいかず汚れが排出できなかったりすることで痛みにつながる……などです。
また、中医学ではめまいも頭の症状のひとつと考えます。
目の疲れがひどいと頭が痛くなることがあるように、頭は目とも関連するからです。
ゆえに、めまいも頭痛と一緒に対処し、主に「詰まりを取る」=「循環を良くする」と考えて不調にアプローチしていきます。
<<【タイプ別】頭痛やめまいのきっかけ>>
頭痛やめまいは原因となる邪気のタイプによって分類され、それぞれに適した対処が必要です。ここでは、どのようなタイプがあるのかを説明していきます。
<風邪侵入>
風邪とは、六淫邪気のひとつ。(六淫邪気についてはこちらを参照)
かぜの諸症状のほかに、震えやめまいなどの揺れる症状も引き起こす邪気です。
風邪はほかの邪気をともない、私たちの身体に侵入しようと試みてきます。
たとえば、次に挙げるような邪気をともない、頭痛やめまいを引き起こします。
風寒邪気(ふうかんじゃき):風邪が寒邪をともなうケースです。冷たい風に当たるなど、身体が冷えることで血流が滞り、頭痛を引き起こします。 また、先の「不通則痛」で言えば、血流の滞りは「血の詰まり」と考えます。 風寒邪気の特徴:痛みが強い
風熱邪気(ふうねつじゃき):風邪が熱邪をともなうケースです。頭部に熱がこもることで清陽が乱れ、頭痛を引き起こします。 風熱邪気の特徴:熱感のある痛み
風湿邪気(ふうしつじゃき):風邪が湿邪をともなうケースです。水分の摂りすぎや甘いもの・脂っこいものの食べ過ぎ・湿気の多い環境での生活など、身体にたまった湿が頭痛を引き起こします。 また、先の「不通則痛」で言えば、湿は「水の詰まり」と考えます。よどんだ水はどろっとして汚いですよね。そんなイメージです。 風湿頭痛の特徴:ダラダラと痛みが長引き、頭はすっきりしない重たい感じ
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<肝陽上亢>
ストレスは五臓の肝の働きを高ぶらせ、肝に熱をこもらせてしまいます。その結果、熱くなった肝の陽気が頭部へと上昇し、頭の清陽を乱して頭痛につながってしまうのです。
また、先に述べた六気の「風」 は肝に対応するので、肝の働きの低下は揺れるような不安定な症状を引き起こし、めまいにもつながると考えられます。
さらに五臓は母子関係で考えることができ、下図の矢印の根元が “母” ・矢印の先が “子” を表します。
肝の母は腎なのですが、更年期などで腎の働きが低下してしまうと、母が子を養えません。
つまり、高ぶる肝を腎が抑えられないのです。
ですので、肝の高ぶりは腎の働きの低下も一緒に考えます。
<気血不足>
飲食物の消化・吸収の働きを担う脾胃が弱くなってしまうと、エネルギーの源である「気」や栄養分である「血」を生み出せません。その結果、頭部を養えず、頭痛やめまいを引き起こしてしまうと考えます。
気血が足りないと、清陽を頭部に集められないのです。
脾胃の虚弱は飲食の不摂生だけでなく、術後や産後で消耗していたり、慢性的な病気で身体が弱っていたり、加齢なども影響します。
<腎精不足>
五臓の腎は、身体の生命力のもととなる「精」の貯蔵庫。この腎精が脳を養う「髄」をつくります。
しかし慢性疾患や加齢や性生活の不摂生などにより腎の機能が衰えると腎精が不足し、脳髄がつくられず、脳が養われません。
その結果、頭痛やめまい・耳鳴りといった不調が現れると考えます。
先述したように、腎の衰えは子である肝にも影響。「肝腎かなめ」と言いますが、肝と腎は一緒に考えることが多いです。
<痰湿>
脂っこいもの・甘いもの・お酒など飲食の不摂生で脾胃が弱ると肥満を招き、水分代謝が悪化。
その結果、排出すべき汚い水を体内に長期間溜め込んでしまい、ねばっとした痰のような代謝物が生じます。このねばねばした「痰湿」が気血の循環を悪くし、「不通則痛」につながるのです。
さらに痰湿が頭部に上昇することで、清らかな陽気が集まる「清陽の府」がよどんでしまい、頭部の機能が乱れて頭痛やめまいが生じてしまいます。
<瘀血>
瘀血とは、ドロドロとしたよどんだ血のこと。瘀血が体内のあちこちに溜まると経絡や血脈の流れを阻み、「不通則痛」が生じてしまいます。
そして、よどんだ血(瘀血)が邪魔で清陽が上昇できず、頭痛やめまいにつながるのです。
瘀血が生じる原因は、もともとの体質やストレスによる肝の不調、慢性的な病気や冷えなど、さまざまな要因が考えられます。
肝の不調がなぜ瘀血につながるかと言うと、気血は一緒に体内を巡るからです。
肝は気の巡りを調節する働きももちますが、ストレスなどでこの働きが低下してしまうと気が停滞します。その結果、血の循環が悪くなり瘀血が発生。
流れのある川の水は澄んでいて綺麗ですが、流れのない水たまりは汚れる一方ですよね。身体も川の流れと一緒で、澄んだ状態を保つには巡りが必要なのです。
<<セルフケアとしてできること>>
ここまで紹介した頭痛やめまいのタイプごとに、対処法を食と生活面から紹介いたします。
予防や改善の参考にしてみてください。
<食養生>
風邪:風邪の場合は邪気がそこまで深くは侵入していないので、軽い発汗作用を使って邪気を散らす食材を活用します。
花や葉っぱ系はお茶にすると使いやすいですよ。花や葉っぱに熱湯を注ぎ、2〜3分程度蒸らせばOK。 苦味が気になる場合、花の萼を取ってからお湯を注いだり、お好みで蜂蜜を足して甘みをつけたりすると飲みやすくなります。
肝陽肝陽上亢:肝熱を冷ます作用のある食材を活用します。
夏であれば、ゴーヤやスイカもおすすめです。
気血不足や腎精不足:五臓の働きを助けて補う働きの食材を活用します。
腎を補うのを考えると、上記のほかに杜仲茶(とちゅうちゃ)もおすすめです。
痰湿:脾胃の働きを促して湿を溜めないようにしたり、発汗や利用で湿を出したりする食材を活用します。
とうもろこしの髭もお茶で摂り入れるのと手軽です。気になる方は「とうもろこしの髭茶」で検索してみてください。
瘀血:血の循環を促す食材を活用します。
私はよく、らっきょうのお漬物を刻んだもの・酢玉ねぎをサラダに混ぜて食べています。
酢玉ねぎは常備しておくと付け合わせにもなるので便利ですよ!
<生活養生>
脂っこいもの・甘いもの・味が濃いものの食べすぎやお酒の飲みすぎに気をつける →これらは痰湿を生みやすい体質をつくってしまいます。
ストレス発散法をいくつか用意しておく →カラオケ(声を出すと副交感神経を刺激します)、編み物や楽器演奏(陰陽が交わる場所である指先を使うと、陰陽のバランスを整えます)などもおすすめです。
適度な運動を心がける →深い呼吸や適度な運動は巡りを促します。先述した食養生と合わせて、軽い散歩やストレッチなどでもいいので、身体を動かすことも意識しましょう。
入浴や暖かい服装を意識する →気血水は温かいところで巡ります。身体を温かく保つことで、不通則痛を予防しましょう。
睡眠を確保する →寝ている間に消耗した五臓が回復します。どうしても睡眠時間が確保できないなら、日中に20分程度の仮眠をとるのもおすすめです。その場合は夜の睡眠に影響させないよう、15時頃までを目安に仮眠するといいでしょう。
排泄しやすい生活習慣を意識する →汚れを溜め込まないように、発汗・排泄を心がけましょう。発汗は入浴や適度な運動、排尿は適度な水分補給、排便は起床時にお湯を飲む&9時までに朝食を摂って腸を目覚めさせるようにするのもおすすめです。
東洋健康法:指先で頭をトントンと刺激したり、頭の生え際〜後頭部まで櫛でとかしたりすると巡りを促し、頭部にこもった熱を下ろせます。ほかにも、青竹踏みで足裏を刺激、仰向けに寝て手脚を持ち上げてぶらぶらさせて巡りを促す方法もおすすめです。
<<まとめ>>
「頭痛」という症状だけに着目するのではなく、根本原因に着目して対処するのが中医学の特徴です。
ですので、漢方薬を使う際も、なにが原因で頭痛を引き起こしているのかによって処方が変わってきます。
また、頭痛やめまいのきっかけを6つ紹介しましたが、それぞれ単独で身体を攻撃してくるとは限りません。
複数のきっかけをともなって攻撃してくるケースもあるのです。
(肝陽上亢と脾胃虚弱の両方が不調の原因として考えられるなど)
さらに、季節やライフスタイルの変化などによっても不調の原因は変化します。
痛みという症状だけを見るのではなく、どうして痛みが生じているのか? という根本の部分も考え、振り返ってみてくださいね。
〜〜〜
中医学で考える頭痛・めまいについて紹介してきました。
中医学は素晴らしい学問であると同時に、西洋医学とのバランスもとても大切です。
頭痛には危険な病気が隠れている場合もありますので、あまりにも痛みが強かったり長引いたりする場合は自己判断せずに、ちゃんとお医者様にも診てもらってくださいね。
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