こんばんは! 国際中医師・ピラティス講師の澤田みのりです。
今回のテーマは「睡眠」。
睡眠にまつわる次のようなお悩みをおもちではありませんか?
ベッドに入っても寝付けない
寝ても疲れがとれない
スッキリ起きられない
眠りが浅く、よく目が覚める
中医学ではこのような不眠の原因を、五臓のバランスの乱れと関連づけて考えます。
この記事では、中医学の視点から不眠の原因を探り、日常生活で取り入れられる対策を紹介します。
ご自身の身体の状態を振り返る際の参考にしてみてください。
もくじ
1. 不眠と関わる五臓とは?
2. 五臓の乱れと不眠の関係
2-1. 感情の乱れ
2-2. 心脾両虚
2-3. 心腎不交
2-4. 痰熱内擾
2-5. 胃気不和
3. 不眠の予防・対策によい食材
<<不眠と関わる五臓とは?>>
五臓(肝・心・脾・肺・腎)のなかでも特に不眠と深く関わるのが、肝・心・脾の3つの臓です。
この3つの臓に共通するのは「血(けつ)」に働くという特徴で、中医学では、血が充実してこそ睡眠も安定すると考えます。そのため、この3つの臓が不眠と深く関わるととらえられているのです。
それぞれの臓と血との関わりは次のとおり。
さらに、五臓が互いに影響し合う関係性を「相生」「相克」と言い、これらの関係性の異常が不眠につながる場合もあります。
たとえば、肝は心を養い、心は脾を養うという、下図のような矢印の関係性をもちます。
この互いに促進し合う関係性を「相生(そうせい)」と言い、五臓は互いに相生の関係をもちます。

また、それぞれの働きが高ぶりすぎないように互いに抑制する「相克(そうこく)」の関係ももちます。下図の矢印がその関係性です。

たとえば、上図の矢印の根元にある腎は、矢印の先にある心の高ぶりを抑えます。
腎の機能低下により心の高ぶりが抑えられなければ、この矢印の関係性(相克の関係)が乱れ、心が興奮して心血を消耗してしまい、精神を養えません。精神を養えなければ睡眠にも悪影響が出てしまいます。
またのちほど出てくるので、ここでは「へーそういう関係性をもつのか〜」というイメージだけもっておいてください。
*
以上から、五臓は相生・相克の関係によってバランスをとっているのだとわかります。
<<五臓の乱れと不眠の関係>>
五臓のバランスがどのようにして乱れると不眠につながるのでしょうか。その主なきっかけを5つ紹介いたします。
<感情の乱れ>
ストレスがたまって胃がキリキリしたり、怒りのあまり血圧があがったりなど、感情の乱れも五臓の働きを乱します。特に、不眠に関連する感情の乱れは「怒りすぎ」「喜びすぎ」「思い詰めすぎ」の3つです。
中医学では、怒りすぎは “肝” を傷め、喜びすぎて興奮すると “心” を傷め、思い詰めすぎると “脾” を傷めると考えられています。
それはなぜなのか、肝・心・脾それぞれの働きに焦点を当てて説明いたしましょう。
【肝】
肝には先述した血を貯蔵する働きのほかに、気を巡らせる働きももちます。
怒りすぎによる影響を受けた肝は働きが低下し、精神を養うのに必要な血を蓄えられません。さらに気が巡らずに鬱結すると、肝に熱がこもってしまい、精神をかき乱してしまいます。その結果、睡眠に悪影響を及ぼすのです。
【心】
心には血流をコントロールする働きがあります。嬉しかったり楽しかったりして興奮すると、心の働きが活発になりすぎて精神を養う心血を消耗してしまうのです。
先述しましたが、睡眠は血が充実してこそ質を確保できるもの。たとえば、音楽家やダンサーなど夜に公演がある職業の人には不眠が多いそうです。公演後の達成感や高揚感で気持ちが高ぶり、心血を消耗してしまうからというのも原因のひとつとして考えられます。
【脾】
脾は、消化・吸収の働きや栄養を運ぶ働きにより気血を生み出す場所です。もし思い詰めすぎて脾の働きが低下すれば、身体を養う気血を生み出せません。「血」は精神を養うのに必要だと何度もお伝えしていますが、エネルギーである「気」も睡眠には必要なのです。
疲れすぎると逆に眠れないことはありませんか?
じつは眠るにも力が必要で、その力の源がエネルギーである「気」です。睡眠には血が充実するだけでなく、気も充実している必要があるのです。
*
ここまで3つの感情の乱れが及ぼす睡眠への影響についてお話ししましたが、それぞれの感情が悪いわけではありません。適度な怒りは気血の流れをよくしますし、怒りが足りなければ、反動で落ち込んだりやる気がなくなったりしてしまいます。
問題なのは、感情の過度な偏りなのです。
<心脾両虚(しんぴりょうきょ)>
脾の不調により気血が生み出せないと不眠につながると先述しましたが、脾の不調が心に影響することがあります。

上図は先述の相生関係を表すもので、相生関係は「親子関係」ととらえられます。
今回で言えば、矢印の根元である「心」は母、矢印の先である「脾」が子です。
子供が問題を抱えると親が悩むのと同じイメージで、子(脾)の不調は親(心)に影響します。その結果、心の働きも低下してしまい、精神を養えなくなるのです。
このように心・脾ともども働きが低下した状態を「心脾両虚」と言います。
次のような場合に心脾両虚に陥りやすいです。
たとえば、次のような不調が現れます。
<心腎不交(しんじんふこう)>
中医学では木火土金水(もっかどこんすい)という “五行” に五臓を当てはめてとらえる考え方があります。五行に五臓を当てはめたのが、下図です。

先ほど、腎の働きが弱ると心の興奮を抑えられず、心血を消耗して相克関係が乱れるとお伝えしました。これは五行で考えるとイメージしやすいと思います。
腎は五行の「水」に、心は五行の「火」に属しますが、腎の働きが弱ると燃え盛る炎を水で消しきれなくなります。水の量が足りないからです。
つまり、心血の消耗を腎が食い止められず、不眠につながってしまうのです。
このように心と腎の相互関係が乱れた状態を「心腎不交」と言い、次のような場合に陥りやすいです。
たとえば、次のような不調が現れます。
<痰熱内擾(たんねつないじょう)>
中医学では、次のような場合に体内に痰熱がこもり、精神的に不安定になると考えられています。
感染症の症状がおさまったのにダラダラと微熱が続くなどあれば、それは体内に痰湿が溜まっているサイン。痰と熱が結びついて上逆することで、精神を乱してしまいます。これを「痰熱内擾」と言います。
また、鬱状態だと巡りが滞り、体内に熱がこもりやすくなります。その結果精神を乱し、睡眠に悪影響を及ぼすのです。
自分で気づくためのポイントは、ダラダラと症状が続くかどうかという点。痰はなかなか治りにくく長期化しやすい特徴があるので、症状がダラダラと続くようなことがあれば、痰の存在を疑います。
<胃気不和(いきふわ)>
胃の働きの乱れを「胃気不和」と言い、これは不眠のきっかけになりえます。
よくあるのが、次のような状況です。

暴飲暴食も1,2回なら大きな影響はありません。それが習慣化しないように気をつける必要があるのです。
<<不眠の予防・対策によい食材>>
薬膳的な視点から、不眠によいとされるおすすめの食材をお伝えします。
💡イライラやストレス、高血圧などには、熱を冷ます次のような食材がおすすめです。
竹葉は不安感があるときにおすすめの食材。お茶だと取り入れやすいのではないでしょうか。中華スーパーやネットで購入できます。「竹葉 お茶」などで検索してみてください🔍
セロリは血圧が高くて寝付けないときに、薬膳料理に取り入れられる食材です。
ストレスにはサッパリした味わいの豆類が良いとされ、なかでもグリーンピースが用いられます。
イライラは体内がグツグツと煮立っている状態。上記四角い枠にある食材は、イライラで煮立った体内の熱を冷ますのにおすすめです。
💡鬱々としてしまうストレスなら、巡らせる次のような草花を活用するといいでしょう。
花類は気を巡らせる働きがあり、ストレスを飛ばしたいときによく用いられます。緑茶は熱を冷ます作用もあるので、「頭に血がのぼる……!」なんてときにおすすめです。
これらの食材はお茶にすると取り入れやすいですが、ジャスミンティーはどんなお茶にブレンドされているのかを確認しましょう。
市販のものは緑茶とブレンドしたものが多いようです。緑茶にはカフェインが含まれるので、夕方以降に飲むと睡眠に影響する可能性があります。
カフェインに敏感な人は、15時以降はカフェインを控えたほうが安心でしょう。
💡精神的な不安定さや疲れやすさを感じるなら、次のような補う食材がおすすめです。
押し麦やオートミール、鶏ハツなどは五臓の心に作用するので、先述した不眠タイプのうち “心” に関わるときにおすすめです。
百合根は感情の起伏が激しいときによく使われます。
蓮の実は精神を安定させる働きがあると考えられています。私はお粥に入れて食べるのが美味しくてお気に入りです☺️
棗やぶどうは不眠によく使われる食材で、特に棗は、粟・卵と一緒にお粥にして食べるのが、古来から続く食べ方なのだそう。
ひじきや黒キクラゲは腎の働きを補います。
赤ワインは血の充実を助けます。
粟や押し麦をお米と一緒に炊いたり、オートミールをシリアルに混ぜたりなど、ご自身で取り入れやすい形を探してみてくださいね。
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五臓のバランスを整えるのは、睡眠の質を上げるための大切なステップです。本記事が、ご自身の身体から出ているSOSに気づくきっかけになれば幸いです。
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