不調の始まりのカギは「正気」と「邪気」のバランスにあった
- 澤田みのり
- 6月11日
- 読了時間: 6分

こんばんは! 国際中医師・ピラティス講師の澤田みのりです。
今回は、中医学的診断を下すうえで重要となる「正気(せいき)」と「邪気(じゃき)」についてまとめていきます。
不調はある日突然やってくるように見えて、じつは「正気」と「邪気」のバランスが少しずつ崩れていった結果として表れます。
では、バランスが崩れるとはどういうことなのか?
バランスを保つためにはどうすればいいのか?
一緒に学んでいきましょう!
もくじ
1. 不調はどう始まる?
2. 「正気」と「邪気」ってなに?
3. バランスの乱れのタイプ:「虚」と「実」
4. 不調の対策と予防
<<不調はどう始まる?>>
不調が表れるまで、いったいどのようなプロセスを経るのでしょうか。
「つながっている」というのは、「互いに影響を与え合う関係性」ということ。
この関係性に乱れが生じたときに、不調が表れます。
この “乱れ” は「正気」と「邪気」のバランスの乱れです。
正気が不足していたり、弱っていたりするときに邪気が侵入してくると不調になります。
しかし強い正気が充実していれば、多少の邪気にも負けず、不調にはなりません。
もしくは、不調になっても回復が早いです。
同じものを食べたのに、お腹を壊す人とそうでない人がいたり、
まわりが体調を崩しているのに、なぜか元気いっぱいな人がいたりしませんか?
この差には、「正気」の量や強さが関係しているのです。
<< 「正気」と「邪気」ってなに? >>
「正気」は免疫力のようなもので、環境の変化に順応したり、病気の原因となるものから身体を守る力です。
身体に正気が満ちていれば五臓六腑がうまく連携し(“つながり” が正常ということ)、体調を崩しにくい元気な状態でいられます。
一方で、「邪気」は不調の原因となるもので、五臓六腑の連携を乱す存在(“つながり” に異常をきたすということ)です。
たとえば、夜ふかしで睡眠不足が続いて疲れがたまると、冷たい風にちょっと当たっただけでカゼを引いてしまう場合があります。
これは睡眠不足で「正気」が弱ってしまい、冷え(=邪気)の侵入を防ぎきれなかったためです。
反対に、食べものをしっかり消化できて、睡眠も充分にとれていれば、ちょっとやそっとでは調子を崩さないでしょう。
なぜなら、「正気が満ちている」状態だからです。
<< バランスの乱れのタイプ:「虚」と「実」 >>
正気と邪気のバランスの乱れには「虚(きょ)」と「実(じつ)」のふたつのタイプがあります。
「虚」:邪気はいないが、正気が不足している
「実」:正気の数は変わらないが、邪気が入り込んでいる

「虚」は防御力が低下して、邪気の攻撃に負けやすい状態です。
すぐカゼを引く、疲れやすいなど、穏やかな症状の不調が表れます。
一方で「実」には正気も存在するので、侵入してきた邪気と攻防を繰り広げます。
そのため、高熱や痛みといった激しい症状の不調が表れます。
実際には「虚」と「実」が合わさった状態が多く、その状態を「虚実挟雑(きょじつきょうざつ」と言います。
たとえば、「疲れているだけでなく、激しい頭痛もする」など、虚実の両方の特徴をあわせもつ状態です。
<< 不調の対策と予防>>
「体調がいつもと違うな」と気づいたときは、自分のなかの「正気」と「邪気」のバランスがどうなっているかを見つめてみましょう。
適切な対処ができれば、つらい症状を悪化させずにすみます。
適切な対処とは、自分のなかの正気と邪気のバランスを見極め、それに応じて対処することです。
もし虚実を見誤って、「実」の症状なのに「補う」手法をとったらどうなるでしょう。
戦う力が増えますから、より症状が激しくなってしまいます。
逆も然りです。
不足しているのに「追い出す」手法をとれば、より力が減ってしまい、症状が悪化してしまうでしょう。
そうならないために、中医学では弁証論治が用いられるのです。
ちなみに、虚実だけを見て対処法を考えるなら次のようになります。
「虚」なら正気を補う手法
「実」なら邪気を追い出す手法
「虚」+「実」(虚実挟雑)なら、虚実のどちらの症状が強いかなどを見て、処方を検討
少し専門的になりますが、実際の弁証論治では虚実の有無にとどまらず、五行学説による “つながり” から、
具体的に身体のどこに虚実があるのか?
どのつながりに邪気が影響を及ぼしているのか?
などを考えていきます。
とはいえ、日常生活においてはそこまで厳密にできなくても大丈夫です。
「最近疲れがたまってエネルギー不足気味だから、『虚』っぽいな」
「お腹が張って痛みも強いし、『実』に傾いてるかもしれない」
――そんなふうに自分の身体に意識を向けて過ごすだけでも、不調の芽を早めに摘むことができ、病気の予防につながります。
たとえば、自分のなかに「虚」を感じているなら、運動不足だとしても無理に激しい運動をせず、ゆったり休む。
「実」を感じているなら、適度に体を動かして発散する。
そのくらいの気づきと工夫でいいのです。
ぜひ次のふたつの意識を大切に、日々を過ごしてみてください。
【対策】病名がつくほどの状態にならないために、「なんとなく調子悪いな」というレベルのうちに対処する
【予防】普段から正気を養い、邪気を避ける意識をもって、不調そのものを予防する
自分の「正気」と「邪気」のバランスを見極められると、薬膳などの養生法も、もっと自分に合ったかたちで取り入れられるようになりますよ。
(見極め方についても、将来的にブログにまとめていく予定です。お楽しみに😊)
〜〜〜
国際薬膳師、国際中医師と試験を進めるにあたり、「虚」「実」を正しく理解しないと「虚実挟雑」との区別が曖昧になり、弁証論治の引っかけ問題に引っかかりやすくなってしまいます。(実際に私がそうでした😇)
簡単そうに見えるキーワードほど正しい理解が必要です。
このブログを参考に、いま一度正しく理解できているか振り返ってみてくださいね。
(参考)
辰巳洋(2017),『実用中医学:一冊でわかる基礎から応用』,源草社.
三浦於菟監修(2019),『マンガでわかる東洋医学の教科書』,ナツメ社.
辰巳洋主編(2009),『一語でわかる 中医用語辞典』,源草社.
/
メルマガ購読者募集中です!
\
週1回程度で、季節の養生やピラティスネタを配信中。
・「カラダや健康に興味があるけど……まずは気軽にできることを知りたい」
という人
・最新情報を見逃したくない人
ぜひご登録ください✨
登録はページ下部の「メルマガ購読登録フォーム」から!
みなさまのご登録お待ちしております!
※シームーン®️の著作物(文章や画像等)を無許可で複製、転用、翻案すること(動画配信・音声配信を含む)を禁止します。