中医学の基礎『五行学説』を図と例でやさしく解説
- 澤田みのり
- 5月22日
- 読了時間: 6分
更新日:14 時間前
こんばんは! 国際中医師・ピラティス講師の澤田みのりです。
春は花粉、夏は熱中症、秋冬は乾燥や感染症……私たちは1年をとおして、自然界からあらゆる影響を受けながら暮らしています。
じつは中医学では、この自然界と身体のつながりを「五行学説(ごぎょうがくせつ)」という理論で説明することが可能です。
「なんとなく体調がすぐれない」「季節ごとに不調がある」――そんなとき、自分の身体のなかの “つながり” を知っておくと、必要なケアのヒントが見えてきます。
この記事では、五行学説とはなにかをふまえ、身体の “つながり” を理解するために必要な基本のキをご紹介。
国際薬膳師試験の勉強中の人は参考書がわりに、なんとなく興味があるという人はコラムを気軽に読むような感じで読んでいただけると嬉しいです。
もくじ
1. 「五行学説」とは?
2. 五行のつながりと影響(相生・相剋・相乗・相侮)
2-1. 相生(そうせい):母子関係
2-2. 相剋(そうこく):祖孫関係
2-3. 相乗(そうじょう)
2-4. 相侮(そうぶ)
3. つながりに注目したケアの視点
<<「五行学説」とは?>>
「五行学説(ごぎょうがくせつ)」とは、自然界と身体がどのようにつながり、どのように影響し合っているのかを「木・火・土・金・水」の5つの要素でとらえる中医学の理論です。
たとえば、「晴れた日の空」と「海」に類似性があるとすると、どんなものがあるでしょうか?
私なら、「青」という色に類似性を見いだします。
ほかにも、「ジャスミン」と「金木犀」であれば「甘い香り」といった具合です。
視点を変えると、空と海には「地球」という類似性が、ジャスミンと金木犀には「花」という類似性があるともとらえられます。
自然に限らず、私たちのまわりにあるすべての物事が、立場によって意味が異なったり、見えないところでじつはつながっていたりするのと同じです。
そういったあらゆる事柄を「木・火・土・金・水」の「五行」でとらえ、自然のリズムに合わせて身体を調えるときのベースとなる考え方が、「五行学説」なのです。
<< 五行のつながりと影響(相生・相剋・相乗・相侮)>>
(1)相生(そうせい):母子関係
自然界では、水が木を育て、木が燃えると火が生まれ、やがてそれは灰となって土に変わり、土は金を埋蔵し、金鉱の傍らには水があります。
このように、ある要素が次の要素を養う関係を「相生」と呼びます。
母と子のような関係性です。

矢印の根元が「母」、矢印の先が「子」の役割を担います。
同じように、五臓も相生関係をもちます。

「肝(木)が「心(火)」を養い、「心(火)」が「脾(土)」を養う……といった具合でつながっています。
母が元気であれば子は安心して過ごせますし、子が幸せであれば母も幸せを感じるように、前後の臓が互いに影響し合っているのです。
ですから、不調があるときは前後の臓もチェックします。
(2)相剋(そうこく):祖孫関係
一方、木は土に根を張り、土は水をせき止め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属の刃で木を切ります。
これは、ある要素が別の要素を管理・調節する「相剋(そうこく)」の関係です。

矢印の根元(祖)が矢印の先(孫)が高ぶりすぎないようにコントロールしています。
イメージとしては、
孫を見守る祖父母
会議で議論が脱線しないように調節するファシリテーター
といった具合です。
同じように、五臓にも相剋関係があります。

「腎(水)」が「心(火)」を抑えるなど、過剰な働きを調整する関係です。
「相生」「相剋」は互いがバランスよく影響し合っている関係性でした。
ここからは、そのバランスが崩れて不調となって表れるような関係性をふたつ紹介します。
(3)相乗(そうじょう)
「相剋」の関係が過剰になった状態を「相乗」と言います。
「矢印の根元(管理する側)の力が強すぎる」もしくは「矢印の先(管理される側)の力が弱すぎる」ことが原因で生まれ、五行で言うと、次のようなイメージです。
【管理する側の力が強すぎる例】木を植えすぎるあまりに土が不足する、水をかけすぎて火が完全に消えてしまう
【管理される側の力が弱すぎる例】水の量は変わらないのに火が弱すぎるためにすぐに火が消えてしまう、木の量は変わらないのに土が不足しているせいで木が育たない

このように、力のバランスが崩れたとき、相手を傷つけてしまうのが相乗の関係です。
これはもちろん、五臓でも起こります。

イライラが爆発して「肝(木)」の働きが高ぶるあまり「脾(土)」の働きを傷つけて、食べ物の消化吸収に不調が出る
「脾(土)」の働きの弱さが「肝(木)」の働きに影響し、イライラや憂鬱感が強く感じる
など。
(4)相侮(そうぶ)
相剋のつながりが逆走した状態を「相侮」と言います。
「矢印の根元(管理する側)の力が弱すぎる」もしくは「矢印の先(管理される側)の力が強すぎる」ことが原因で生まれ、五行で言うと、次のようなイメージです。
【管理する側の力が弱すぎる例】金属の刃が脆すぎて、木の幹を切れない
【管理される側の力が強すぎる例】火が強すぎて水が蒸発してしまう
相侮では、矢印の向きが相剋とは逆になります。

これも同じように、五臓でも起こりえます。

「肺(金)」の働きが弱すぎて「肝(木)」の働きを制御できないなど、相侮も力のバランスが崩れたときに生まれる関係性です。
<< つながりに注目したケアの視点>>
「相生」「相剋」「相乗」「相侮」――これらはすべて、“つながっている” からこそ起きる関係性です。
私たちが不調を感じるとき、そこには次のふたつの “乱れ” が生まれています。
力関係の乱れ
影響する方向の乱れ
“つながり” や “影響の仕方” という視点をもって身体をとらえることで、より本質的なケアにつながるのです。
〜〜〜
中医学では「部分」としてとらえるのではなく、「つながり」に着目してとらえていきます。
五行学説を知ることは、身体のなかの “地図” を把握すること。
より幅広い視点から健康や生活について考えられるようになるために必要な考え方なのです。
(参考)
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